Article

Rで読む州別平均寿命と2024年大統領選の相関—r = -0.50が言えること

米国50州とワシントンD.C.を対象に、2022年の平均寿命と2024年大統領選の二大候補得票差を結ぶと、Pearsonの相関係数はr = -0.50、p = .00019となりました。この結果をRで確かめながら、州レベルの関連と個人・因果の説明を切り分けます。

Share

こはるの読みどころ

小さなp値を結論にせず、データ年、集計単位、散布図、検定の前提まで順に読むための実践的な相関分析です。

こはるの読みどころ

州別の平均寿命と大統領選の得票差を散布図にすると、右下がりの線が見えます。数字もr = -0.50、p = .00019となれば、かなり明確な結論に見えるかもしれません。

ただし、この分析で本当に分かったのは何でしょうか。『共和党候補の得票が多い州ほど平均寿命が短い』という州レベルの記述と、個人の投票行動や寿命を説明することの間には、大きな距離があります。

そこで、51地域のデータがどのように結ばれたのかをRでたどりながら、相関係数とp値が言える範囲、そして次の分析へ進むための条件を整理します。

51州・DCを結ぶと見えるのは「州レベルの線形関連」

使われた選挙データは、州選挙当局の確定結果をまとめたFECの2024年大統領選公式結果です。対象は50州とワシントンD.C.の51地域で、Trump票とHarris票から次の値を作っています。

text
二大候補得票差 = (Trump票 - Harris票) / (Trump票 + Harris票)

正ならTrump候補、負ならHarris候補が二大候補の合計票で上回ったことを表します。第三候補への票は分母に入らないため、これは全投票数に対する差ではなく、二大候補に正規化した得票差です。

もう一方は、CDCの2022年州別生命表にある出生時平均余命です。これは2022年の年齢別死亡率が将来も続くと仮定した期間生命表であり、実際の新生児集団を生涯追跡した値ではありません。CDCの解説がいうように、その年の死亡状況を写した指標として読みます。

この2列を州コードで結合すると51組になり、Pearsonの相関係数はr = -0.50でした。負号は二大候補得票差が共和党候補側へ大きい州ほど平均寿命が短い方向、絶対値0.50は完全な直線関係からは離れているものの、無視しにくい線形関連を表します。

p = .00019が小さくても、因果と個人差までは説明できない

51組に対する検定統計量はt = -4.041、自由度49、p = .00019です。Rのcor.test()では、Pearson法の帰無仮説を相関0として検定し、前提が成り立つとき統計量は自由度n - 2のt分布に従います。

このp値は、『相関が0であるという統計モデルの下で、観測値と同程度以上に極端な結果が出る確率』を評価する材料です。米国統計学会の声明が整理しているとおり、仮説が正しい確率でも、結果が偶然だけで生じた確率でも、効果の重要度でもありません。

そして、p値は因果の向きを追加してくれません。NISTの散布図ガイドも、関連が因果を証明するわけではないと明記しています。所得、医療へのアクセス、職業、年齢構成、地域性などが両方の変数と結び付いていても、この2変量の相関だけでは分離できません。

さらに、点は人ではなく州です。CDCの集計データに関する注意に沿えば、州の関連を個人へそのまま当てはめるのは生態学的誤謬になります。『共和党へ投票した個人ほど短命である』とも、『投票先が寿命を変える』とも、このデータからは言えません。

Rでは相関係数・散布図・感度分析を同じ流れで見る

選挙票と平均寿命をstate列で結合したdfがあれば、核となる計算は短く書けます。先に行数と欠損を検査すると、結合ミスを相関として解釈する事故を避けやすいですね。

r
dfvotemargin<(dfTRUMP - dfHARRIS)/(dfTRUMP + df$HARRIS)

stopifnot(nrow(df) == 51)
stopifnot(!anyNA(df[c("vote_margin", "Tot_LE")]))

pearson_result <- cor.test(
  df$vote_margin,
  df$Tot_LE,
  method = "pearson",
  conf.level = 0.95
)

pearson_result

estimateでr、p.valueでp値、conf.intで相関係数の信頼区間を確認できます。元の分析と同じ丸め済み生命表を使うと、rは約-0.50になります。

ただし、数値だけで終わらせず、散布図で直線性、外れた点、ばらつきの変化を見ます。NISTも散布図を、線形・非線形の関係、外れ値、分散の変化を見つける診断手段として位置付けています。

Pearson法の前提や外れ値への感度が気になる場合は、順位に基づくSpearman法も並べてみます。結果が同じになるとは限らないため、ここでは値を決め打ちせず、分析者自身が比較します。

r
spearman_result <- cor.test(
  df$vote_margin,
  df$Tot_LE,
  method = "spearman",
  exact = FALSE
)

spearman_result

PearsonとSpearmanの符号や大きさが大きく違えば、少数の点、非線形性、順位と実値の違いを散布図へ戻って調べる合図になります。州という地理単位どうしの独立性も自明ではないため、単純なp値はモデルの前提付きで扱いたいところです。

2022年の健康指標と2024年の投票を組み合わせた条件を固定する

ここで結んでいるのは、2022年の死亡状況から作られた平均寿命と、2024年11月5日の大統領選結果です。CDCの公開一覧では、2026年8月23日時点の最新の州別生命表は2022年版ですが、全米生命表には2023年版もあります。『最新』という言葉だけで異なる粒度や年を混ぜないようにしたいですね。

再現時は、FECの公式ExcelファイルとCDC報告書の版、対象51地域、二大候補得票差の式を一緒に記録します。特にCDC表は表示値が丸められているため、別のデータセットや年へ差し替えれば相関係数も変わり得ます。

因果に踏み込むなら、同じ集計単位と時点をそろえるだけでも足りません。交絡候補を事前に定めた多変量モデル、地域的な依存を扱う設計、複数年での再現性、必要に応じた個人レベルデータが求められます。今回の単純相関は、その設計へ進む価値があるかを判断する探索結果です。

州別の負の相関は、次の仮説を絞る材料になる

冒頭の問いへの答えは、二段階に分けると明確です。2022年の州別平均寿命と2024年の二大候補得票差の間には、51地域でr = -0.50の負の線形関連があり、相関0のモデルとは整合しにくい結果でした。

一方で、政党支持が寿命を決めることや、個人の投票と寿命の関係は示していません。実務では、データ年と集計単位をタイトルや図注に残し、散布図・信頼区間・感度分析をp値と並べて、記述的で仮説生成的な結果として伝えるのが、この分析を最も正確に生かす方法です。

出典

Share

Related Articles

カテゴリやタグが近い記事を続けて読めるように並べています。