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Rで読む臨床医学の国別比較:上位2%リストの分母と欠損値
臨床医学の高被引用研究者を国別に比較すると、人数と人口当たりの指標では順位が変わります。2026年版リストを扱うRの分析例から、集計対象、国の欠損補完、人口データとの結合が結果の意味をどう変えるかを整理します。
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こはるの読みどころ
順位を見る前に、「誰を数えて、何で割ったか」を追ってみよう。Rの短い集計でも、欠損値と結合の扱いに比較の前提が表れるんだね。

国別の研究者数を棒グラフにすると、どの国に多くの人が集まっているかは見やすくなります。では、その人数を人口で割ったとき、同じ順位になるでしょうか。
2026年11月1日に公開されたLoessのRによる臨床医学の分析は、この問いを考える具体例です。使うのはStanford–Elsevierの「上位2%」として知られる高被引用研究者リストですが、人数の集計だけで比較を終えると、分母や欠損値に埋め込まれた条件を見落としやすくなります。
Rで表を読み込んでから国を比較するまでの処理を追い、人数・人口当たり・分野構成がそれぞれ何に答えるのかを整理していきましょう。
「2026年版」と引用を数える期間を分ける
まず固定したいのは、集計する表です。公式の2026年版データセット(Version 9)は2026年10月7日公開で、Scopusの2026年8月1日時点のスナップショットを使っています。単年版が対象とするのは2025年中に受けた引用です。公開年と引用年は同じではありません。
また、通算版と単年版は別の表です。今回の分析対象は単年版なので、通算版へ置き換えると、同じ「臨床医学の国別人数」でも集計の対象者が変わり得ます。
「上位2%」という呼び名も、単純に全研究者を一列に並べた上位2%という意味ではありません。2020年のデータベース更新論文では、複合引用指標による全分野の上位10万人に加え、主なサブ分野で上位2%に入る研究者を含める仕組みが説明されています。分野によって引用の付き方が異なるため、全分野共通の順位だけでは拾いにくい研究者も含める設計ですね。
このリストの行数を数えて得られるのは、選定条件を満たした掲載研究者の人数です。国に所属する研究者全員の人数ではありません。
Rの国別集計では、欠損補完の前後を残す
Excelを読む入口にも、集計対象を変えてしまう分岐があります。readxlの仕様では、シートを指定しなければ最初のシートを読みます。Loessの分析で使うブックは先頭が列の説明なので、データを読むには read_excel(file, sheet = "Data") と明示する必要があります。
国の列 cntry は最新の所属機関の国を表し、国籍ではありません。分析例では、ここが欠けている行を、論文上で最も頻繁に現れる国を表す top_cntry_career で補っています。
dplyrの coalesce() は、各位置で最初の欠損していない値を選びます。ただし、関数が値を埋められることと、2つの列が同じ意味であることは別です。この補完後の国別集計には、最新所属による分類と、過去の論文から補った分類が混ざります。
そこで、元の国列と補完したかどうかの印を残すと、補完あり・なしの比較ができます。主分野を Clinical Medicine に絞ってから使う count() は、重みを指定しなければ各グループの行数を数えます。集計前に欠損を除けば人数そのものが減るため、除外した人数も結果と一緒に残したいところです。
人口で割ると、研究者の人数から密度へ問いが変わる
Loessが公開した集計では、米国は人数で首位ですが、人口当たりではスイスが上回ります。次の数値は公開された分析例の掲載値で、ここで全件を再集計した結果ではありません。人口には2024年の値を使い、人口100万人以上の国を比較しています。
| 国 | 掲載研究者数(臨床医学) | 人口100万人当たり |
|---|---|---|
| 米国 | 28,458 | 83.7 |
| スイス | 1,345 | 約149 |
人口当たりの値は「掲載研究者数 ÷ 人口 × 1,000,000」です。世界銀行の総人口指標 SP.POP.TOTLを分母にすると、答えは住民数に対する掲載研究者の密度になります。研究者全体に占める選出率を知りたいなら、別途、条件のそろった研究者総数が必要です。
人口との結合も、単なる列の追加とは限りません。dplyrの結合仕様では、inner_join() は一致しない行を結果に残しません。比較から消えた国を把握するには、まず left_join() で国別集計を残し、人口が欠ける行を点検してから対象を絞る方法が使えます。
さらに、結合先の国コードが重複していれば、1つの国の行が複数に増える可能性があります。人口表を1国1行にそろえ、欠損と人口の下限を明示してから比率を計算すると、どの条件で比較対象が決まったかを追いやすくなります。
国別人数・人口比・分野構成を使い分ける
ここまでの処理を押さえると、同じ分子でも分母を変える理由が見えてきます。国ごとの臨床医学の掲載研究者数を比較する場面では、次の問いを区別できます。
| 知りたいこと | 計算する値 |
|---|---|
| 掲載研究者が何人いるか | 臨床医学の掲載研究者数 |
| 住民数に対してどれくらい集まっているか | 臨床医学の掲載研究者数 ÷ 人口 |
| その国の掲載者は臨床医学にどれくらい偏っているか | 臨床医学の掲載研究者数 ÷ その国の全分野の掲載研究者数 |
最後の割合を求めるときは、分母を作る前に臨床医学だけへ絞らないようにします。先に絞った表の人数を分母にも使えば、各国で100%になり、分野構成を比較できません。また、掲載者の分野構成だけから研究費の配分や研究者全体の構成を読み取ることもできません。
引用指標を研究の質そのものと同一視しない点も、この比較の前提です。データセットの公式説明は、掲載を卓越性の絶対的な証拠として扱う解釈を戒めています。人口で正規化しても、測定しているものが引用に基づく掲載者数である点は変わりません。
冒頭の問いに戻ると、人数と人口当たりで順位が違うのは、答えている問いが違うからです。Rで比較表を作るときは、集計対象の版と期間を固定し、補完・結合・除外の履歴を残したうえで、目的に合う分母を選ぶ。そこまでそろって初めて、順位を説明できる比較になります。
出典
- Title: Top-cited scientists in clinical medicine by country: the Stanford–Elsevier top 2% list in R
- URL: https://www.r-bloggers.com/2026/11/top-cited-scientists-in-clinical-medicine-by-country-the-stanford-elsevier-top-2-list-in-r/
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